活動報告/クオリア京都
第3回クオリアAGORA_2014/ワールドカフェ
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ワールドカフェ
「高齢者の人達が若者と一緒に夢を楽しみながら明るく生きることができる社会構造を模索する」~「そのための日本人のメンタリティーの変革とは?」~「それが実現すれば少子高齢化社会はそれほど暗い社会ではないんじゃないか?」と、そんな流れでいつものようにエキサイティングな議論が交わされたワールドカフェとなりました。
[ 各テーブルのまとめ ]
●第1テーブル 報告者
野田 旬太郎(京都大学大学院思修館)
われわれの班で話し合ったのは、人口問題、高齢者問題あるいは、少子化問題にどう対応するかというところで、まず、都市と地方どちらにも住むという案が出たり、仕事と子育てのバランスをどう取るかうを考え、それによって労働観を変えていけばいいんじゃないか。 あるいは、行政が人口問題の解決に入るべきかどうかなど、さまざま意見が出てました。 最終的なまとめなんですが、世代間で、最初のディスカッションでも出ていましたが、第1、第2、第3世代のバランス、そこのコミュニケーションをとることで、人口問題は解決に向かうということになりました。
かつては、親子孫世代が、おんなじ屋根の下に住んで、その中で、相互にコミュニケーションを取って、足りないところを補い合ってきたわけなんですが、今の時代では、単身化などが進んでそれができなくなっている。 では、どうするか。 一つのコミュニティー、例えば、マンションの中でその機能を補うことができないかなど、いろいろ考えました。 実際に、マンションの中に、いわゆる核家族世帯と高齢者の世帯が同居して、その中で、高齢者のところで子育てをやってもらうとか、ある団地の中では、高齢者が託児所のようなことを引き受けて、子育て支援をしているというケースもあるという報告がありました。 こういうふうに、コミュニティーとして、3世代がコミュニケーションを取れるような場を提供することで、子育ても高齢者問題もどちらにも対応できるのではないかということで、まとまりました。
●第2テーブル 報告者 忠村 健太郎 (同志社大学)
主に、少子化と高齢化について話しました。 少子化については、何で、若者が結婚しないかということなんですけれども、経済面の不安もそうですが、自分に人生経験がなかったりして、果たして自分で子どもを育てられるか、という不安みたいなものがある。 それをどうしたらいいのだろう、ということで、いろいろ話しました。 その中で、今は、やはり、同世代の結婚っていうのがメーンですが、20歳もの歳の差結婚というのがあるというのが例として出ました。 それは、20歳も歳が違う人と結婚すれば、人生経験も豊富ですし、お金もあるので、そうしてでも子どもを生むのもいいのかなとか意見が出ていました。
高齢化の問題では、70歳、65歳以上のシニア層をどう活用するのかということについて、頭脳労働と超単純労働に、すごく二極化している現状があるんじゃないかという意見が出て、これをもう一回、中間労働というか極端な頭脳労働と単純労働の間のような仕事がつくれないかなということで話し合いました。 それで、例えば、京都にある「おもてなし」の心を活用した「ホスピタリティ産業」なんかは、高齢者に向くんじゃないかなという意見が出ました。
川田 哲也 (京都大学大学院思修館)
なんで、日本でうまく少子化が止まらないのか。 それは、もう、あまり、労働条件がよくないからじゃないか。 例えば、東京の一極集中なんですが、なんで集中するか、漠然とした憧れとか、何となくいいという、いわば信仰心みたいなもんがあると思うんですね。 それで、討議の中で出た一点だけ面白い話を紹介します。 若いうちに、外に出る経験をするのが大事じゃないかということです。 例えば、20代前半であれば、1週間だけでも、シリコンバレーとかシンガポールに行くだけでも、自分を見つめなおし、世界のレベルを知ることにつながる。 それは、「ハードルが高いから頑張らなくちゃ」ではなくて、割と、自分たちだって自信をもって立ち向かえるじゃないかということ。 こういう自信を得られることだけでも、外にでる意味があり、若い時から、こうした働き方、労働観について見つめなおすことに繋がる機会を創ることが大事じゃないか。
●第3テーブル 報告者 阿曽沼 飛昴 (京都大学大学院工学研究科)
ちょっと違う話で盛り上がりまして、あまりまとまっておりません。 で、キーワードふうに紹介させていただきたいと思います。 まず、コミュニケーションのできる場を創造するというのがいろいろなところで必要で、老人と子どもが接する事ができるというのが重要だろう。 ただ、コミュニケーションと言いましても、今の若い人たちが使うツール、SNSとかっていう、コミュニケーションの質自体がジェネレーション間で結構違うと思いますので、それは、コミュニケーションの場を創る中で、考えていかないといけない問題じゃないかと思います。
それから、最近の若い者は、という話が出ました。 ぼくも若者なんですけど、さっき、西村先生は「先のことなんかなんもわからへんで」とおっしゃいましたが、でも、会社に入ると、人生プランかなんかたてさせられて、「あなたの生涯年収はいくらで…」とか。 なんもわからんといいながら、そういう希望のない暗いことしか言われなくて、つらいよねみたいな。 研究職についても、オブリゲーションが多すぎて、自由に研究できず、野望も持ちにくいみたいな、とりあえず暗い時代で、これを何とか変えていかなきゃ子どもはつくれないのかなあという、まあ、そういうことになりました。
それから、最後は、組織にアビリティーとか生きがいとかを求める時代は、もう終わったのかな、という話も出てまして…。 自分なりのアイデンティティーとかを持つ中で、子どもを産むことをどうしていくかを、若い人は考える時代になったのかな、とそういう話だったと思います。
●第4テーブル 報告者 中野 千春 (市場調査社大阪)
こちらのテーブルでも、明るい話を、と始めたんですけれども、前半は、結構暗い話に終始してまして…。 このテーマで話をしようとすると、どうしても若者と年寄りの戦いになるということで、前半は年金の話をしました。 その後、年寄りが悪いという話がありつつ、若者も悪い、若いのが恋愛しないから悪いというような話にもなりました。 で、なんで恋愛しないんだろということについては、男女が仲良すぎる、中性化しすぎている、さらに、働き過ぎで疲れているというようなことも出て、そもそも、子どもの必要性を感じていないのではないかということまで出ていました。 その後、若者といっても、大学生は明るいんだけど、30代が暗いんだよみたいな話が出まして、私は、女性は責められないと言っていたんですけど、ここで、30代できっちり責められたわけです。
それで、どうしたらいいのかということになり、結局、若者がどう年寄りからお金を引き出すことができるか、これがキーワードかなと。 どう引き出すかという話は、例えば、子ども作っちゃって、親からお金を引き出せばいいとか。 お年寄りに、孫の教育費を出してもらうとか。 あと、お年寄りの活用については、子どもとお年寄りは親和性が高いので、子どもの見守りをしてもらえばればいいのでは、という意見もありました。 最後に、視野を広げるために、若者を海外に行かせたりとか、日本には資産があるのでそれを使い、また、それを日本に持ち帰えるようにする。 これ、西村先生がおっしゃったのですが、日本は、「あほが幸せになれる社会」というのが、一番のとりえということですので、これを、日本のすばらしさとして世界に伝えていくべきだろうと思いました。
●第5テーブル 報告者 日田 早織 (京都大学大学院農学研究科)
私たちのグループでは、まず、労働観、これからは、多様な労働の仕方を認めていくというか、そういう考え方が大事という話をしました。 例えば、時短勤務、とか、契約社員とか、契約社員からパフォーマンスが上がったから正社員になれる、一旦子育てで抜けても戻れる、などの柔軟な労働観、労働制度が必要だという話が出ました。
結婚をしなくなっているという話では、女性も自己実現を目指す傾向が強く、キャリア志向への関心が高く、恋愛の優先順位がどんどん下がっている。 あるいは、結婚しなくても、楽しいことが他にいっぱいあるということが広がっているんじゃないか。 それから、男性が「嫁を食わせる」といった志向ではなくって、女性もお互い自己実現していく。 今、山口先生から、奥様が45歳過ぎて起業したというお話を聞きました。 山口先生が、子育てが終わった後専業主婦になるのはもったいない、ということで勧められたそうなんですけれども、そういう働き方もあるんじゃないか。 それから、結婚したらそれはカンパニーで、男性が稼いで女性を食わせるという思想ではなく、男女がお互い支えあっていくというのが、いいなと思いました
それから、今の男性基準の社会観ですとか、上下関係があるという社会観は、20世紀の労働慣行の視点で生まれたもので、母系社会だった日本はずっとそうだったわけではない。 21世紀には、案外、ちょっとしたきっかけで変わっていくんじゃないか、そういうことを考えていくことが大事じゃないかという話も出ました。
それで、これからのあり方ですが、おじいちゃんおばあちゃん世代の人が、カレッジというコミュニティの中で、次の世代、その次の世代を育てていけばどうかというお話がありました。
長谷川 和子 (京都クオリア研究所)
有難うございました。 では、スピーチをしていただいた西村さんから、各テーブルの報告を受けてということで、一言お願いいたします。 「あほが幸せになれる社会」についても、もう少し詳しくお話いただきたいと存じます。
西村 周三 (国立社会保障・人口問題研究所名誉所長)
話をうかがっていて、言いたいことが最後に一つあります。 最近、「6次産業」という言葉が流行っています。 1次、2次、3次…、キーワードは6が1+2+3ではなくて1×2×3、つまり、何がなくてもあかんというわけです。 2がなくても3がなくてもあかん。 で、実は、1は結構いい加減に思っていて、みんな、「アホでもできる」というイメージがありました。 だが、実は違う。 農林水産業は、中卒でもできるという、先入観があったが、しかし、実際はすごい知恵がいる。 それこそあほな先入観があったために、自信を失い、そのために衰退しました。 2次、3次、きょうおみえの先生方は3次産業で、最も知的な産業であり、偏差値の高い人種です。 でもね、そういう人たちが、1次、2次から学ばないと、ほとんど3次だけでは成り立たないということを、最近痛切に感じています。 で、これからの社会は、1次と2次と3次がみんな揃っている社会が、当たり前の社会。 で、農業やったら、漁業もそうですが、年寄りもある程度役に立つケースがある。 それから、定時に出勤する製造業。 日本の製造業はすごい。 アメリカはひどいです。 金曜の夕方と月曜の朝は生産性が落ちます。 遊びたいからね。 日本は、両方とも、そんなことはありません。 遊びたいし朝早いのも嫌だけど、ちゃんとやるんです。 これが日本の製造業の特徴です。 ただ、3次産業に、ちょっと、ブラック企業といわれるような、製造業の論理を持ち込んでいるところがあります。 3次はやっぱり、自由な発想、面白いことをするのが大切。 偏差値の高い人間と低い人間が共存する産業が3次産業と思っています。 そういう意味で、偏差値の高い人は、下げる必要はありませんが、低い人と共存する社会を目指してほしいと思っています。
長谷川
クオリアAGORAは、今、西村さんがおっしゃった通り偏差値の高い人も低い人もというとちょっと誤解を招くかと思いますが、職業も年齢も異なる多様な方々が同じ場で何を学ぶのかという形で進めてきました。 それで、ずっと、力をお貸しいただいている山極さんがこの10月、京都大学の総長に就任されることになりました。 立場は変わられますが、これからもこの会に参加し、お力を貸してくださるとおっしゃっていただいております。 ちょっと一言お話願えますか。
山極 寿一 (京都大学大学院理学研究科教授)
有難うございます。 最初から参加させていただいておりますが、きょうのように、若い人が多く参加して、発言をドンドンしてくれるというところに、会の変遷ぶりを感じました。 これから、このようなさまざまなジャンルのいろんな人が相乗りをして、どんどんディベートできるような機会を、私もいっぱい作れればなと思っています。 AGORAは、そのきっかけになってくれました。 メンバーの山口さんも京都大学に来られましたし、これからは、京都大学のど真ん中でこういう議論をやってほしいと思っております。 このままAGORAのメンバーでいるつもりです。 今後とも、よろしくお願いします。