活動報告/クオリア京都

 


 

 

第4回クオリアAGORA_2013/ワールドカフェ



 


 

スピーチ

ディスカッション

ワールドカフェ

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ワールドカフェ




ワールドカフェは2030年の日本食と酒についてです。 身近なテーマだけに、大いに盛り上がった意見交換でした。 


≪ワールドカフェとは?≫


[ 各テーブルのまとめ ]



●第1テーブル 報告者  

山本 勝晴 (浄土宗西山深草派 僧侶)



2030年の和食ということで話をしました。 ひとつは、和食は日本人にしかわからないから世界に出す必要はない。 もう一つは、世界に類のないいいものだから、もっとよく世界にわかってもらうべきだという、相反する考えが出ました。 それで、どっちかですが、相反する意見のようだが、実はこれは相反しないだろうということになりました。 


2030年の和食を考えた時、その時は、私も還暦過ぎているのですが、繊細な味の日本食が求められているかどうかということも議論しました。 まあ、味覚というのは、子供の頃の食生活が重要とか、食べたいという気持ちが大切なんだけど、今の若い人たちは感性を磨く場所がないとか、食べたいという気持ちを強くする場所がないということになり、こうした中で、ほんとうに美味しいものがわかる、食べたいと強く思う人とそう思わない人で二極化するだろうという話になりました。 


その中で、料理も、アパレルのオートクチュールとプレタポルテのような考え方をして分けたらどうだということになりました。 高級料理の髙橋さんのような方に、しっかりラインを外に出していただくことで、プレタポルテ的なところもぶれないで作っていけるのではないか。 そして、これから日本は人口も減っていくので、需要を下支えする人たちが減っていきます。 若者がこうなっている状況の中で、日本食を作っていく職人さんも減リ、人材確保も難しくなっているので、日本食のポジションを上げる必要もあり、オートクチュールとして世界に出して、認められることで日本食の位置をしっかり作っていくことが大事なのではないかと。 


山口 栄一 (同志社大学大学院総合政策科学研究科教授)


話はつまり、世界で稀有な日本食を研ぎ澄ませ、もちろん定義化され、英語化されていないといけないのですが、その上で世界中の人に学んでもらう。 そして、学んだ人たちに、それぞれの国に帰って作り続けてもらう。 また、マーケッティングもうまくやって「なんちゃって」ではないちゃんとした日本食を世界中で広めようということです。 





●第2テーブル 報告者  山本 博司 (市場調査社プロジェクトディレクター)


私も、京都のお酒屋さんと10年以上のお付き合いがあって、ダウントレンドといわれる日本酒を何とか復活させたいという思いで参加しました。 それで、きょうのディスカッションで思ったのは、高級和食と日本酒のマリアージュというのでは、日本酒の市場はシュリンクしたままだろう、と。 というのは、高級料理店というのは先ほどの話で出たオートクチュールであり、これは、とてもニッチな世界で、日本酒の市場の拡大にはつながりにくい。 それよりも、それとは別に日本食というジャンルがあって、それは、ラーメンとかとんかつ、焼き餃子とか、外から入ってきて日本の食として定着したものですが、日本食といえば、お魚や煮物というような近視眼的な合わせ方ではなく、そういった料理と合わせていけば、日本酒の需要も上昇するのではないかという話をしました。 


日本食がどうなるかということも話しました。 これまで、日本は、工業立国で外貨を稼いだのですが、これから、稀有な文化である日本食で、もっと外貨獲得ができないかという話になり、その中では、わびさびという日本食の精神性を前面に出すとか、「似非日本食」的な料理でもいいから、外に出して稼いでいこうという意見もありました。 一方で、石油の枯渇とかで、海外では日本食も日本酒もだめになるという話も出たのですが、国内は、子どもたちが給食で米に馴染み始めているので、日本食回帰があるのではないかという声もありました。 







●第3テーブル 報告者  西田 光生 (東洋紡化成品開発研究所)


日本食も日本酒も未来はすばらしい。 それが議論の基調となりました。 なぜかというと、日本食は、最近、京料理が非常に変わったということがあるんですが、日本食は、メーン料理だけでなく、どのディッシュも美味しくなった。 これは、すばらしい調味料を持っているので、65種類以上という食材を使う。 ここに、他の国の料理と全く違うすばらしさがあります。 そして、米飯給食で育った子どもたちがいて、2030年の日本食を支えます。


今は、吉野家の牛丼をたべている人たちも、やがてちゃんとした日本食に戻ってきます。 これが、日本食の未来を明るくしている。


次、日本酒はどうか。 否定的なお話が多いですが、実は、2011年は、下がりっぱなしだった日本酒の消費量がちょっとあがったんですよ。 日本酒の味わい方が変わったのと、海外でも作るようになった。 それで、いろいろな国で作られるようになると、日本で作られた日本酒はすごいブランドになって、今日持ってこられたお酒が、10万、20万で売れるようになるかもしれません。 日本酒の未来は明るい。 



●第4テーブル 報告者  八木 育美 (淡交社編集部)


まず、和食とは何かで始まりました。 庶民の食べるご飯と味噌汁というのと、日本料理として調度も含め、きれいな器に入り四季折々のものが和食だとかいろいろ出て、二極化しているが、お金さえ出せば、食べたいと思えば、誰でもどんなものでも食べられる時代。 伝統と食べ物、文化と食べ物が切り離されている時代になった。 未来はどうなるかについては、分からないということに。


それと、今の子どもは魚を食べるようになったが、その前の世代は魚嫌い。 これがどうなるかシミュレーションすることが大事である。 「未来は分からない」というのは決して投げやりな意味ではなく、今の若い世代が大人になったときに、何がよしとされるのか、人口は増えるのか減るのか、エネルギー危機に陥るのか陥らないのか、予測できないので、もう一度昔の価値観に戻るかもしれないし、戻らないかもしれないという意味で、ただ、分からないからと言って何もしないのではなく、あらゆる可能性を想定して備えておくことが大事。


それから、日本酒については、時代に関係なく、庶民も偉い人も同じようなものを飲んでいたことが不思議だねという話になりました。 







クオリアAGORA事務局


スピーカーの佐々木さんと髙橋さんのお二人とゲストの伏木さんから感想をいただきたいと思います。 




佐々木 晃 (佐々木酒造社長)


日本酒についてご心配いただいている、みなさん、悲観的な見方だなと不安になりましたが、結論は、そうではないという方に進んでいったのでホッとしています。


日本酒は、ここ何年かでむちゃくちゃ美味しくなってますし、どんどん技術革新が進んでいますので、これからもますます美味しくなっていきます。 皆さんも、日本酒を飲んで、これからも、いろいろ教えて下さい。 




高橋 拓児(木乃婦若主人)


日本料理を作る上で、大変勉強になったと思います。 今日また、絶対必要やと気づいたことがありました。 それは、ぼくたちの仕事は、できる限り練度の高いものを常に周りに置いておいて、それをよりすぐって、その集合体として料理を作っていくことが必ず大事なことだということです。 つまり、練度が一つ下のものを持ってくると全部がそのレベルになってしまうのです。 だから、例えば、包丁を研ぐ技術も昔よりも今、今よりあすはさらにレベルを上げていく。 お米もそうで、佐々木さんのお酒も今が最高でも、さらにレベルをあげてもらわないと、日本料理は上がっていかない。 どうしても、ボトムに合って行ってしまうんです。


日本料理の食文化はそういうものなので、料理人の目、周りの目もすべて高いところにないといけないと改めて感じました。 明日から仕事頑張ります。 




伏木 亨 (京都大学大学院農学研究科教授)


実はこういうシンポジウムというのは、最後の落とし所が決まっていることが多いのですが、この会は、とてもエキサイティングで、近年になく面白い経験でした。 ものを考える時、これは大事なことだと思いました。 それで、日本酒と日本料理でしたが、これ、それぞれ全然違うところがあるんですよ。 日本酒はきまじめで日本料理はしたたかです。 日本料理は絶対生きていくと思うんですよ。 中身は変わっていくかもしれないが、日本料理だといって生きていくしたたかさがある。 日本酒については、日本食がそのきまじめさを認め、こいつを連れて行こうと思っていると思うんですわ。 そうやって、日本酒と日本食はやっていくと思うんです。


今の日本料理は、30年前と全然違い、素材も変わってきているが、精神はピリッとしているのが日本料理のええとこで、それが信用できる。 どういう風に変わるか、時代によってわかりませんけれども、日本料理的なものは生きていくし、日本酒の一つも変えないという律儀さが、日本人には受けていくと思うので、この先、わりと楽観的に見ているんです。 それと、今、保育園ではすごい和食ブームです。 これ、いわば和食の「失われた30年」というのが、ひょっとすると回復するんじゃないかと期待しているんです。 きょうは、こんなことを一から考えさせてもらいました。 



 




 


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