活動報告/クオリア京都
第7回クオリアAGORA/ディスカッション
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ディスカッサント
堀場製作所最高顧問
堀場 雅夫 氏
佛教大学社会学部教授
高田 公理 氏
京都大学大学院理学研究科教授
山極 寿一 氏
同志社大学大学院総合政策科学研究科教授
山口 栄一 氏
長谷川 和子(クオリアAGORA事務局)
塚本さんはご自分のことを「町の発明家」とおっしゃっていましたが、クオリアAGORAが始まって初めての技術者の方のスピーチでした。 では、これから、塚本さんを交え4人の皆さま方によりまして討論をお願いしたいと思います。
塚本さんの蓄電池の技術でどんな次の時代を作れるのか、あまりお話にはならなかったのですが、何故、アメリカから京都に帰って事業を始めることになったのか、あるいは、新しい創業の時、スピンオフしたかつて働いていたところの知恵とか技術が役立ったのか、そうでなかったのかというようなことを、これからの議論していただきたい。 で、その前に、京都大学大学院工学研究科の宇田哲也准教授がお見えになっておりますので、ちょっと簡単に塚本さんの技術の評価というか、きょうのお話について語っていただき、それから議論に移りたいと思います。
宇田 哲也(京都大学大学院工学研究科准教授)
2次電池自体の専門家というわけではありませんが、今うかがったアイデアというのは大変合理的で、なぜこんなことを思いつかなかったのかと思いました。 (資料13)BIND電池のデータが出ているのを見まして、まさにこのようになるんだろうなと思います。 (資料10)その中でコスト計算なんですが、ほんとにコストが鉛の1.5倍でおさまるのかなと思い、気になりました。 もし、そうなら、電気自動車より、今まだ主流である内燃機関の車のバッテリーに使えばいいのではないでしょうか。
こんなことをいうのも、ついこないだ車検でバッテリーを変えたらといわれたが、2万円もするし、第一まだ動いているので断ったんですね。 すると、一週間でJAFを呼ぶ羽目になり、人の話は聞くもんだと、まあ、思ったわけなんですが、車の寿命が10何年ほどで、今の鉛電池寿命は3~5年といわれていますので3、4回は鉛電池を変えないといけない。 結構お金がかかるわけです。 それに比べるとBINDは、寿命が鉛の4倍ですから、1.5倍の価格でできるなら十分安いですね。 今、日本の車は7千万台あるそうなんですが、まず7千万台×(かける)の「皮算用」をされてもいいのでは、と思った次第です。 もう一つは、12ボルトでこまめにつなぐのがポイントだとおっしゃっていました。 原理的には、大きく100ボルトでつないでも同じことではないのでしょうか。 こまめにつなぐメリットがもうひとつわかりにくかったんですが、その二つを教えていただければと思います。
塚本 壽(CONNEXX SYSTEMS社長)
コストはですね、計算の仕方というのもあって多少違いがありますが、目安としては1.5~2倍ぐらいでいいものができる可能性があると考えています。 回路が必要ないというのが、大きなコストダウンの要因になります。
それから、12ボルトの件ですが、特許的には、Li-ionが3.6ボルトでしたら1.2ボルトの鉛電池を三つつないだものをパラレルにするのが最小単位だということで、できれば3.6ボルトごとにほんとはパラレルにつなぎたいのですが、鉛電池で一番安いのが12ボルトなんですね。 これが7.2ボルトとかだとコストメリットが出ないのです。
山口 栄一(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授)
私なりに理解したことをお話すれば、塚本さんのイノベーションアイデアは二つあるということでした。 一つはBIND電池で、それは今までの普通の車に乗っている鉛蓄電池に、市販されているLi-ionを上手に加工して独自のコア技術で接続するだけで、寿命が4倍から5倍になる。 これはエネルギー革命にもつながると思います。 もう一つは、全くブレークスルーイノベーションで、Li-ion電池の放電容量が4倍になるSCCという画期的な負極物質を発明されたということです。 この負極物質に置き換えるだけで、例えば電気自動車の走行距離が2倍ほどになるというんです。
BINDは、いわばヤドカリで、さっき宇田さんもおっしゃたように、今の車に乗っけるなどして、つまり手近な果実をもぎ取るようにしてビジネスを起動することができる。 こうしてビジネスを起動させたうえで長期的展望として、まだ誰も実現できなかった未来の電極材料を世に提供して、未来社会を変革せしめる。 そんな将来のブレークスルーにつなげていくことをお考えになっていると思うのですが、とにかく度肝を抜かれました。 これから、この二つで議論を進めていけばどうかと思います。
高田 公理(佛教大学社会学部教授)
今夜うかがった話は、二つともものすごい話だと思うのですが、果たして、こういう場所で気軽にお話しになって大丈夫なんですか。 細部に至るまでの理解は無理としても、ほかの企業が取り込んでしまう怖れはないんでしょうか。
まあ、SCCに関しては、何か特許などの方法でのガードが可能なのかなと思うのですが、BINDのほうは、それに必要な要素が既存の製品として実在しているわけですよね。 だから、誰かに、アイデアを盗まれたりする心配がありそうに思えるのですが……。 そのへんの権利の保全を、どのようにしておられるのか、聞かせてもらえますでしょうか。
塚本
そうですね、鉛電池とLi-ionをパラレルにつなぐというのは、10年ぐらい前にマクセルなんかが、特許を申請し、特許はおりていると思います。 (資料12)ただ、ぼくのやった小さなパラレルブロックをつなぐというのは、弁理士事務所も調べてくれたのですが、どうも他にはないみたいで、特許を再出願したわけです。 まだ特許にはなっていませんが…。
まあ、取れたとしても、スピーチでも申し上げたように誰でもできるような簡単な技術なので、特許を尊重しない国に行けば、どんどんつくられてしまうかもしれません。 これは早くつくったほうが勝ちということになるでしょう。 ご懸念された通り、権利の保証は十分にされていません。
堀場 雅夫(堀場製作所最高顧問)
塚本
上が従来のLi-ion と鉛を組み合わせた電池で、下がBINDです。 いずれも12ボルトを10個つないで120ボルト、リチウムも30個ぐらいつないで120ボルトと同じ電圧にしていますが、上の従来型には、サーキットがついていますね。 例えば、突然大きな容量の電気が入ってくると、電圧が急に上がるのが嫌がって、サーキットが働いて遮断するためにある回路の仕組みです。 とてもこの回路は複雑なもので、このためにLiと鉛を一緒につなぐことを複雑で難しくしているのです。 これに比べ、下のBINDは、鉛にLiがパラレルにぶら下がっているだけなんですが、もし問題が起これば、鉛電池が液を分解してエネルギーを処理してくれます。 だから、Liは安心して鉛にくっついてぶら下がっていられるという考えなんです。
堀場
私は、小さい時から電池ちゅうものはパラレルにつないだらいかんと教え込まれて育ってきて、もう80年、それをずっと信じてきた。 運動するときに水を飲んではいけないというのと同じです。 直列はいくらやってもいいけど、パラレルにつなぐと電池が壊れると思ってきた。 これを解決されたんですか。
塚本
何もそれは解決していません。
堀場
え、ということは、パラ接続は悪いことなかったんですか。 誰がいかんいかん、なんでいうたんかなあ。
塚本
パラレルにしておくと自分で電池が調整するんですね、強い奴と弱い奴と。 ただ、今でも電池メーカは、Li電池で1㌂hと10㌂hをパラでつないだらダメというと思います。 でも、つないで問題が起こった人はいないと思いますね。
堀場
それは、信仰みたいなものですか。
塚本
なんでそうなったか、それはわかりません。
堀場
そんなことわからんと電池やってるいうのはおかしいと思うな。 そこが根本的な問題であり、なんでそうなったかを解明するのが第一条件ではないですか、サイエンティストとして。
塚本
町の発明家としてはですね…。
堀場
サイエンティストとは違うというわけや。
塚本
できれば、早くそういいたいと思っています。
宇田
えーっと、乾電池ではそういうことがあると思います。 蓄電池の場合、鉛とLiと混ぜても原理的には大丈夫と思います。 乾電池は混ぜると、弱い方が壊れることがありますね。
塚本
あっと、そうです。 1.2ボルトの電池と10ボルトの電池というように電圧の違うのをパラにつなぐのはダメなんです。 ぼくの特許は同じボルトで仮想セルを作るというのとともに、どういうケミストリーのLi電池をどういう電池につないだらいいか、ある程度アジャストしていて、何でもかんでもというわけではない。
堀場
会社始めてしばらくしたころ、ちょっと電池の容量がスペースの関係で足りないことがあり、蓄電池をパラレルにつなごうと思って、GSの技術者に相談したことがある。 すると、蓄電池を絶対にパラでつないでもうたら困りますていわれた。 あれは嘘やったんやなあ。 間違って教えられたわけや。
塚本
ぼくは間違っていると思いますが、そういうふうに説明する人の方が多いですね。 ただ、なぜかといわれて、ちゃんと説明できる人はそういないと思います。
堀場
まあ、サイエンスというのはそういうもんなんやなあ。
山極 寿一(京都大学大学院理学研究科教授)
すごく初歩的な問題を質問させていいただきます。 今年夏、関電が停電するというので、バックアップで発電機を購入しなければならないということになって、調べてみました。 すると、何と理学部だけで最低でも1200万円かかるということでえらいことだったんですが、幸い一斉停電がなくて良かったんですけど…。 ほっとしました。
それで、電気を貯められないということは、つまり、蓄電システムというのが大規模に展開できないというのはどういう理由なんでしょうね。
いうなら、電気は世の中にいっぱい流れていますよね。 それをちょこちょこ貯めながら使えばと思うんですが、どうしてできていないのかと不思議なんです。
塚本
それはコストだと思いますよ。
高田
蓄電技術の可能性としては、非常に不思議なシステムが考えられていますね。 たとえば、真空の巨大な部屋をしつらえておいて、そこで、非常にでかい地球ゴマのようなのを、グワーっと回すわけです。 で、電力が必要な時に、その回転力で発電機を回す。 でも、こういうのは皆、余りうまく行かない。 つまり「電力を貯めるのは非常にむつかしい」わけです。 それらと比べると、今日のお話の二種類の電池を組み合わせた蓄電システムは、すごいですね。 ところで、それに必要なコストは、どんなもんなんですか。
塚本
いや、でも、揚水発電なんかに比べたら、むちゃくちゃ高いです。
高田
そうであるにしても、電力需要に大きな波がある状況の下で、それが少ないときにできた電力を電池に貯めておいて、必要なときに自由に取り出せるシステムができたら、結果として電力需要が平準化されたのと同じ効果があるわけでしょ? ただし、非常に高いコストがかかるというわけですね。
塚本
全部鉛電池でもコスト合わないんじゃないでしょうか。 どうしても必要なところだけ、スペースがないというようなところだとメリットがある。
高田
さきほどの話に出てきた1200万円の発電機と比べると、どうなんでしょうか。
塚本
発電機ですか?
山極
あれはたまたまバックアップとして軽油とか使う発電機しかないないということだったんです。 ほかに電気を貯められる低コストできちんとした装置があれば、それを設備しとけばいいわけです。
塚本
ぼく自身、10キロワットhぐらいのものまでだったら、自分でもよくシミュレーションもやっていてわかるんですが、何百キロワットhとか大規模なものになると、安全面でどうなるかなどよくわかりません。
堀場
いっぺん電気を電気化学的なものにしてまた電気に戻すというのは、エントロピー増大の法則で、そんなことやればやるほど必ずエフィシェンシーが悪くなるというのは事実ですから…。 電池ちゅうのは、最低保管のためであってこれを電力のソースに使うというのは、今のところありえない。 もっとも、これから何が起こるかわかりませんけどね。
塚本
ただ、こういう使い方はいわば「地産地消」で、これはこれでいいかなと思います。 何か使い方があるんじゃないかなと考えているんですけど。
堀場
いや、確かに、このシステムの考えはいいと思いますよ。 ただ、電池がエネルギーのソースというのは、ちょっとオーバーだと思うんですよ。
山口
これから太陽電池が普及しますね、深夜電力は安い。 その時、コミュニティー、家庭などに電池を一個置いて、この電気を貯める。 これで、太陽光発電の不安定さを安定させ深夜電力の安さをうまく活用するなど最適化が図られていく。 電池は、電気を生み出すというより、安定化のために使うといいと思います。 スマートグリッドに電池を入れるというシステムを作り出してやれば、世の中の考えはだいぶ変わっていくと思うんです。
堀場
宵越しの金をもたない人が、貯金を覚えたということやね。 サラリーをまず貯金しといて、毎日消費していくという考え。 電池の効率が良くなって、これまでは預けるのにものすごいお金がかかったが、それがあまりかからなくなってきたみたいなことで使いやすくなってきたということなんや。
山極
Li-ionと鉛電池の違いでコストと寿命のことが出てきましたが、もうひとつ重さがあると思います。 それと、充電に時間がかかりますね。 今、障害者で脚の不自由な人に、電気の力をつかってその脚を動かせるようにするということが可能になりつつあります。 そういう時代になってくると、ますますコスト、軽量化、長寿命化、そして急速充電ということが大事になってきます。 これが、BIND電池の開発を進めていけば、すべてうまくいくんでしょうか。
塚本
ええっと、そうはならないですね。 まず、軽くするには技術を上げなければいけないので、これに対応するのは、次に進めているSCCですね。 革新技術が要ります。 ああいうもので対応していかないといけないと思っています。 急速充電もなかなか難しい。 充電機の問題もなかなか難しいので、(資料19)今あるシステムで解決しようというのがこのBIND電池カセットを使った分散型蓄電システムなんです。 これなら用意してあるカセットを入れ替えるだけで済み、充電時間はゼロです。 これ、ドバイで提案しました。
山口
SCCなら効率が4倍以上に上がるので、計算では材料も4分の1で済むわけですよね。 身体障害者サポート用の電池がだいぶ軽くなり、負担はずいぶん軽くなりますね。
山極
携帯電話が出てきた時に、ケータイそのものが高かった。 今はものすごく安いですよね。 ものにお金を払う時代から、情報ネットワークを手に入れるためにお金をかける時代になった。 充電、蓄電システムでさきほど、カセット型で入れ替えるというのが一番早く簡単な方法だとおっしゃったわけですが、それにはいまコストがかかると思うんですが、やがてカセットは当たり前になって、ケータイの情報のように電力だけにお金をかけるという時代になる可能性がある。 そういうようになっていくんでしょうか。
塚本
ちょっとピンボケの答えになるかもしれませんが、BINDバッテリーカセットを使った小型電動バスは、普通の電気バスと違って高いバッテリーを買うのではなく、走った分だけ電気代を払えばいいので、おっしゃっていることに近いかもしれません。 ただ、入れ替え式というのは便宜的なものと思っていて、効率が4倍の電池ができれば、入れ替式でなくてもいい時代が来るのではないかと思います。 ただ、今は、高い電池を買うより入れ替え式の方が相当安くいけると思うので、提案しています。 バスの会社は世界中どこも赤字と思うので、今の電池の価格で電気バスをどんどん走らせるとは思えません。
堀場
電池に何百万円もかかる電気バスは、無理やわなあ。 電気バスは単独決算するしかないが、話にならないだろうね。
山口
関西電力の新しいビジネスモデルとして、BIND電池を使ったエネルギーステーションを置くというのは、どうでしょうか。
堀場
アイデアとして面白かっても、コスト計算からいったら、どうかなあ。 電気バスがビジネスとして許されるのは、地球温暖化ぐらいしかないのと違いますか。 ただ、地球温暖化で主犯がCO2というのは、もうまもなく化けの皮が剥がれるし…。 電気バスって、趣味というか自己満足というか、まあ、音は静かやわね。
塚本
そう、それにクリーンですね。 こんなバスならうちの近くに来てくれてもいい。
堀場
でも、今、ガソリン車の排気ガスは、驚くほどきれいになっていますよ。 うちの会社で調べているが、まさに空気浄化装置付きのエンジンなんです。 空気の悪いところなら新車を走らせたらキレイになるというようなことなんですよ。 もうすでに、車が走るから環境が悪くなるなんていう時代ではないのです。
山口
では、将来の日本のエネルギービジネスのあり方ということで、ご意見はありませんか。
山極
さっきの続きなんですけど、いま、電力を供給してもらうのは必ず有線なんですよね。 蓄電技術がトータルになっていって、みんな好きにポータブルな蓄電をしながら電気を利用していけるようになればいいなと思ったんです。 が、さっきのお話ではちょっと難しそうで、残念だなと思っているところです。 どうでしょう。
山口
結局、コスト次第なんですね。 どのぐらい下がれば実現するんですかね。
塚本
現状の20分の1かなあ。
高田
素人考えですが、燃料電池と、今日の話に出てきた二種類の電池を組み合わせたシステムを統合するという方法には可能性がありそうな気がするのですが……。
山口
燃料電池は、塚本さんの技術でどんな状態ですか。
塚本
先の技術として研究していますけれども、現在、Li-ion電池の20倍程度の容量のものはできるんじゃないかと思っています。 コストの方はちょっと今わかりません。
宇田
私、燃料電池の研究者なんですが、「エネファーム」(大阪ガスの家庭用燃料電 池システム)が出ていて、1キロワットの発電で300万円ぐらい。 で、補助金が出て150万円ぐらいになっていますね。 ですが、補助金なしで、100万を切るようにならないと普及は難しいでしょうね。
五十嵐 敏郎(金沢大学大学院)
私は、将来のエネルギーをどうするかということを考えておりまして、私自身は、2020年以降に、移動体に使える燃料が得にくくなるのではないかと思っております。 その時、どういうエネルギーが考えられるのかと研究を進めているところです。 まあ、自分自身はエネルギーをたくさん使わない社会をどのように実現するかということに関心を持っています。
先日、フランスのリヨンに行きまして、あそこの街はトロリーバスが非常に活用されていまして、これと、先ほどの蓄電池を組み合わせると、もっと少ない電気で行けるのではないかと思い、都市交通に活用すればということで可能性を感じました。 物流でトラックをどうするかということもあるんですが、これもトロリーにして、架線のないところは電池で行くとかいうようなことでこれはいけるなあ、と先ほどのお話を聞いていて思いました。 とにかく蓄電池も含め、新しいエネルギーのあり方を考えて行かんといけないですね。 (資料20)
山口
都市アクセスの物流トラックというのは、どちらかというと電池が似合ってますね。
五十嵐
ただ、電池は重いですね。 LI-ionは容量的に不足しているなど、問題がありますし。 鉛主体でしょうが…。
山口
だからBIND。
五十嵐
そうですね。 ただ、現実的には、電池だけでは大変なので、主要なところは架線でいいのかな、と。
山口
だけど、電線と電柱は風景的にどうもきたないですよね。 これからは、先ほど,山極さんもから、ポータブルという話がありましたが、将来的には電気を使うのに電柱も電線もない社会、街になっていくと思うんですよ。
では、このへんでワールドカフェに移っていこうと思います。 塚本さんの事業がよくわかってきたと思いますが、「BIND電池」と、世界中の学者が研究しながらできなかったものを塚本さんが開発した画期的な負極材料「SCC」を中心に、塚本ビジネスを、自分だったらこういうふうに盛り上げていくというようなことを話し合っていただければと思います。
塚本
最後にちょっといわせていただきます。 アメリカで事業をスタートさせ10年以上やったんですが、アメリカではお金も優秀な人材も確かにすぐに集まります。 しかし、人はどんどん辞めていきます。 思い返せば、20年いた日本電池は、100年も経った会社なのですが、受付の女性に至るまで、電池のことを社員がみんなよく知っていたんですね。 このために、たったの数年間で私は、電池のいろんなことが覚えられたんです。 自分で立ち上げたアメリカの会社では、ぼくが日本電池の1年でおぼえたことのほうが、立ち上げに集まってくれた彼らが5年かかっておぼえたことより多かったのです。
日本では、人が長く勤めていられるそういう企業風土が今なくなりつつあると聞いておりますが、日本にとってこれはとても貴重で大事なことだと痛感しております。 なんとかそれを取り戻せるよう、京都で事業を続けようと思っているんです。