活動報告/クオリア京都
第1回クオリアAGORA_2013/ワールドカフェ
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ワールドカフェ
今年度(2013年)最初のクオリアAGORA、今回のテーマ「睡眠」について角谷教授より科学的・医学的な見地、また高田教授より人と睡眠との歴史をなぞりながらの文化的な見地と、二つの側面よりお話しいただきました。
それらを踏まえ、ワールドカフェでは「睡眠の良いところ~睡眠の意味を考える」「2030年の睡眠とは」「未来の睡眠ビジネス」などなど、ワイガヤ精神で語り合いました。
[ 各テーブルのまとめ ]
●第1テーブル 報告者
平野 実晴 (京都大学大学院思修館1回生)
睡眠とは何かというところから入ったのですが、睡眠を社会学的に見た時、それは先進国の悩みだということで、エチオピアやブータン、インドとかいろいろな例も出てきました。 こういう国はそもそも、睡眠については考えない。 先進国の睡眠の悩みは、20世紀になってからの考え方で、生産性とかなり結びつくのではないか、と指摘がありました。 それから別の観点として生態から考えた時、例えばだいたい70歳位になると、「最近寝にくいですねえ」とかそういう話が、先進国でも途上国でも出てきて、結局人間は人間なんだと思うようなこともあります。
また、肉食、草食セオリーというのもありまして、肉食のアングロサクソンとかはぐっすり寝るけれど、草食的な日本人は浅い眠りでいつでも活動できるようにみたいな…。 それでこれがどう展開したかというと、2030年を考えたのですが、これから生態的なところは変わらないわけですよね。 ということは、この先進国的な、起きている時間と寝ている時間の分離、そして起きている時間にのみ生産性があるという考え方でいいのか疑問が生まれます。 寝ているときも生きているということだと。 起きている時から寝ている時にいく過程の楽しさ、そして、「ぼくはこれから夢を見るんだ」という楽しみ、そういうところが生きるっていうとこにつながっていくんじゃないか、というような指摘がありました。
そこにビジネスがどう関わってくるかということですけれども、睡眠それ自体を測る時、今は健康な人の指標がないということで、これからそこのデータが取れるからいいんじゃないかというような話もあったんですが、それに対してはネガティブな意見が多くありました。 データを取ることよりも、寝ること自体を楽しくするような、生きている時間の中に正当化して組み込むようなビジネスが求められているんじゃないかっていうような話がありました。 つまり、やっぱり寝ることっていうのは、生きているということ、活動や生産していることに対して寝ることではなく、生きていく上でのひとつの重要な楽しみであって、それは、肯定的に捉えるべきだっていう考え方が、2030年に向けて求められていくんじゃないかっていうことです。
みなさんも、これから寝ることっていうのは大事なこと、いいことなんだということです。 「ぼくは家に帰って寝ます」ってはっきり言って眠りに行くことで、実際にリーダーとして2030年の社会を形作っていけるのではないでしょうか。
●第2テーブル 報告者 上田 源 (同志社大学3回生)
随分学問的なお話でしたが、このテーブルではビジネスの話ばかりでした。 睡眠というもので今のビジネスを考えた時、例えば、アロマセラピーとか音楽とかいろいろあるが、人によって効果もまちまち。 睡眠時間そのものもその価値観もばらばら。 どうやったら人間に対して最適なのかということも恐ろしい程ばらばらで、みんなの共通項を見つけるのは無理だろう、ということになりました。 それで、スポーツ選手の話になり、イチローとか浅田真央も非常に睡眠にこだわる。 なんでこだわるかというと、自分のベストパフォーマンスを保つためにです。
でもそれは、ベストだと勝手に決め付けているわけですよね。 3割5分打てるから、でも、4割打てるかもしれないですね。 でも、3割5分が自分のベストだと思っている。 3割5分がベストな状況と信じているんですね。 それで、その時の習慣がベストだと信じている。 つまり、自分にベストなものを信じたら寝られる。 つまりビジネスは…、あの、睡眠において何がいいかということはわからない。 だからこそ、わからないからこそ、いっぱいいろんなものが出れば、それが全てビジネスになっていくんじゃないか。 つまり、自分自身が何を信じるか、例えば、夢占いを信じるひともいれば、…。 最終的には、わからないからこそビジネスが成立するんだよという、ものすごく散らばったお話で申し訳ありません。
●第3テーブル 報告者 上月 克己 (京都大学)
二つのビジネスプランに絞ってお話します。 まず、ロウソクの話が出まして、洋蝋燭と和蝋燭はちがい、和蝋燭の光はねむくなるんだということです。 どういうことかというと、優しさとか落ち着くという感覚を和蝋燭の光やその揺れ具合から受ける。 それは幼児期の体験からくるものだろうということで、幼いうちに和蝋燭をみて眠くなるような習慣をつけるようなCD-ROMやUSBを売りものにするのはどうかというアイデアが出ました。 後半のビジネスプランは、眠りの二極化が起こっていて、若者はできるだけ短い時間で好きに寝られる、年寄りは、快適に長く睡眠できたほうがいいという話が出まして、どちらにも見合ったビジネスプランがいるということで、そこから、それぞれに適した睡眠コンサルタント、カウンセラーというものが必要になるんじゃないか。 この二つのアイデアが出ました。
●第4テーブル 報告者 岡部 美由紀 (京都大学大学院思修館1回生)
3点話します。 一つ目はオムロンの堤さんがテーブルにいらっしゃったので、オムロン製品の目的、二つ目は2030年の発展的“睡眠”の予想、最後に睡眠マーケットについてです。 一つ目に、オムロンの開発目的です。 先ほどの討論の中でも睡眠計について大小それぞれ機能の説明がありましたが、大きい方の製品の開発目的は「ないがしろにされがちな睡眠の大切さを現代社会にわかってもらおう」ということです。 二つ目に2030年の予想ですが、これだけでは、2030年のマーケットにつながっていかないのではないかと思いまして、2030年につながる機能を考えてみました。 それで出てきたアイデアは睡眠学習です。 睡眠を図るだけでなく、睡眠中に学習するという付加価値が加わることで、より一層現代人に睡眠の意義をアピールできるのではないか。 三つ目は、まず睡眠マーケットとして事故を防ぐ安全管理の面に注目しました。 睡眠不足による事故だったり、睡眠障害を一般の人が理解出来ていないことに対するデメリットもたくさんあると思います。 そのデメリットを理解するために、睡眠障害が重くなってから病院に行く前に日頃から睡眠計を使っていけばいいのではないかという提案がありました。 わかりやすい効果が求められるのが睡眠マーケットだと思います。
しかし、今すぐに効果が出て、完璧に睡眠が改善されるという商品の開発はすぐには難しいのではないか。 なので、睡眠マーケットの発展は2030年に向けて10年ごとに長い目でマーケットの成長を見守っていくことが必要だと思いました。 2030年までには、睡眠サービスは進化していくと思います。 そして睡眠についてはまだわからないことが多いというのが、前の討論での結論でした。 ということは、睡眠について分かることが増えていけば、商品とマーケットはさらに進化していくと思います。
将来的には、中高年の方々をターゲットにして、医療との連携、寝具メーカーとのコラボ商品等で需要があるのではないか。 また、睡眠関連商品で睡眠障害の患者からのデータを広く集めることで睡眠の質を改善する商品の開発につながる可能性があり、医療との連携をより強めていく必要があるだろうと考えました。 会社も大きなターゲットです。 社員の健康管理も睡眠計を使えば、データで管理ができ、社員の健康向上につながります。 このように睡眠マーケットは広がっていきます。
このテーブルはすっかりオムロンのマーケットアピールになってしまいましたが、他社も含め、睡眠計の市場が拡大することで、より良い睡眠のできる社会につながっていくのではないかというのが結論でした。
●第5テーブル 報告者 佐伯 直樹 (京都大学大学院思修館1回生)
このテーブルは、小山先生の影響を非常に受けまして、心地良い睡眠とは何か、というところから話が始まりました。 このテーブルには私と同じ年代の大学生がいましたが、私達の間でも睡眠の長さや質は違い、当然年齢によっても異なってくるということで、個別の睡眠コンサル、カウンセラーが必要とされていくのではないか、と考えました。 (寝ている時だけに注目するのではなく起きている時も含んだ)24時間の中で睡眠を考える必要があり、24時間のカウンセリングが必要になる。 それから、睡眠学習は可能かという話も出ましたが、これの可能性ですが、とても難しく、2030年のビジネスには無理だろうと。 とにかく、ひとり一人睡眠は違い、個別の話をしましょうと、議論を続けました。
角谷 寛 (滋賀医科大学特任教授)
睡眠のビジネスを2030年の時点で区切って考えるということですけれども、現時点で思っている睡眠、あるいはそれのターゲットなものというのと2030年の時点では、ターゲットポピュレーションも変わるし、ニーズも変わってくるので、それらを踏まえながらというのが絶対必要だったというのがひとつあります。 あと、それをやるにしても、今から、データを蓄積していってホンモノを作らないとダメだと思うので…、何卒よろしくお願いします。
やっぱり、ぼく自身は研究もそうだし、社会に役立つということも踏まえて考える時には、社会のニーズというのを必ず目にしていないと、研究者の独りよがり―それでもいい分野はありますが―社会に近いところにいる人にとっては、社会のニーズを捉えながらやる必要があるので、今日の会合はよかったと思います。
クオリアAGORA2013事務局
有り難うございました。 2030年はかなり時代が変わるということでしょうから、若い方々からはもっと奇抜なヒントやアイデアを遠慮せずにどしどし出していただきたいと思いました。 このクオリアAGORAは、違いを認める都市・京都だから成立するのだと思います。 来月は、「健康」をテーマにしますが、スピーチやディスカッション、そしてワールドカフェを通して、いろんな気づきをしていきたいと思います。