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ワールドカフェ
上野千鶴子さん、それに京大総長の山極さんも出席しての第6回、中身の濃い、スピード感のある内容でした。 20代の選挙参加率をあげるにはどうしたらいいか、選挙参加率が上がったら、日本はどうなるか、そして、女性と若者が被選挙権を行使するための方策は、につい意見を交わしました。
[ 各テーブルのまとめ ]
●第1テーブル 報告
20代の投票率を上げるためには、どうしたらいいかですが、過激な意見としては行かないとペナルティーを課したらいいんじゃないか、あと、気に食わない人がいたら白紙で出すようにしたらいいとか、バツできるようにしたらいいとかの意見が出ました。
そして、元々のお題としてはそうした制約をしないで、20代の投票率をあげるというのが、一番話し合わないといけないポイントだというところに立ち戻りまして…。 そうなりますと、20代の人が、なぜ投票に行きたくないかというと、自分たちの生活が変わる実感がないとか、政治家の発するメッセージ自体が、自分たちに関係がない、実感がわかないからではないかという話が出ました。 あと、ネットで投票できるようにしたら、もっと気軽に投票できるのではないかという意見もありました。
もう一つのテーマなんでが、女性の被選挙権行使させるについては、これが実現できれば、投票率も上がるであろうということだったんですが、まあ、軽い話としては、各大学から候補者を出すっていうのも。 これ高田先生に否定されましたが…。 あと、選挙に出るためには、お金がかかるんで、その辺を支援する仕組みをつくる、若い方であれば、署名をたくさん集めたら出られるようにするとかで、ハードルを下げればいいんじゃないか。
女性の被選挙権が上がらない理由として、女性が憧れる議員がいないからで、海外ではヒラリーとかサッチャーとか日本でいえば上野先生とか、そういうかっこいい女性を増やしていく必要があるというような内容でした。
●第2テーブル 報告者 山本 千春 (市場調査社大阪)
20代の投票率をあげるためには、ということで、まず、何で選挙にいかないのかという話をしました。 それで、例えば、面倒くさいとか、そもそも、自分たちの現状に満足しているので、社会を変えようと思わないし、選挙にいかないといった、そんな雰囲気になっているという意見が出ました。 そして、行きやすくするために、ネット選挙を導入するという意見。 あるいは、若者たちに人気のAKBとか嵐とかを表看板にして選挙に行くように呼びかけたらいいんじゃないかという意見が出ました。
それで、投票に若者を行かせた選挙の結果はどうなんだろうかということなんですが、今の若者像として、主義主張がないというのが出ていたので、声の大きい人に流れていくんじゃないか。 極端に右か左に流れていく傾向があるんじゃないだろうかという結構悲観的な結論になってしまいました。
最後に、女性と若者が被選挙権を行使するにはどうしたらいいか。 これは、政治家に対するイメージがよくないっていうこととか、自分の関係する家族とかをほっといてまで貢献しようとは思わないという意見もありまして、その辺の意識を変えていかないといけないね、っていうところで話は終わっています。 で、投票率を上げるためには、上野さんに出てもらったらいいんじゃないかという話も出ました。
●第3テーブル 報告者 末原 誠二郎 (京都大学文学部)
まず、20代の投票率をどうやって上げるかの議論から始めました。 ここには、二人20代がいたのですが、消極的な票になってしまい、自分の意見が反映される気がしないという意見が出ました。 それで出てきたのが、中選挙区制です。 中選挙区を経験した世代の人と、それを知らない今の若者では投票の意識の違いがあるっていうことと、それで、山極さんのアイデアですが、地域の票と全国の票という二票にして、自分の地域以外の魅力的な候補者にも投票できるようにすれば面白い、と。 そうすれば、より魅力的になっていくんじゃないか。
それで、20代の投票率が上がったとして、どのように変わっていくかということです。 まあ、田母神さんの例が出て、強い日本への憧れで、そういう票が増えるんじゃないかという意見もあったんですけど、ぼくはそうじゃないという意見。 20代はやっぱり面白いことがしたいなっていう意志が強いんじゃないかというふうに考えていて、それから、だんだん若者論の話になって、ぼくら、無茶苦茶いわれているんですけど…。 それで、何か反論することはないかといわれて、反論として、ぼくらには可能性がある。 今の20代は、60代のような人とは違う新しい可能性を持っているといいまして、これは前向きだなあ、と。
この後、女性や20代の被選挙権については、途中で終わってしまったんですけど、やっぱり、女性の、「出る杭」ではなくて、どっちかというと「杭を引く」という考え方が、女性同士の間であるということが、企業に勤めている方からも出ました。 こういうこともあって、女性が立候補するのは難しいんじゃないかという意見でした。
クオリアAGORA事務局
今、出る杭という話がありましたが、堀場さんは、「出る杭になれ、出すぎれば叩かれることはない」っておっしゃっていたことを思い出していました。
●第4テーブル 報告
ぼく、一番新しい国政選挙には、投票にいかなかったんですけど、その訳っていうのは、住民票が京都ではなく、地元にあったりして、そのへんの手間が煩雑だったんです。 日本において、投票にいくという機運が若者の間でないということに関連して話があったのは、アメリカでは、投票にいったら、ステッカーのようなものをもらって、というのがあるらしく、そういうので選挙の雰囲気が盛り上がり、投票に行こうという機運ができるらしい。
女性と若者が被選挙権を行使するためには、ということなんですが、上野さんは、すごい現状に不満を持っているなあという感じなんですね。 その不満というのが、選挙に出て世の中を変えようとか、そういうエネルギーにつながっていく。 その不満というのが、今の若者には、それがない。 自分の関係するコミュニティーとそうでないコミュニティーの境界がすごくはっきりしている。 それは、ぼくも薄々感じていて、大学でも、ゼミで知り合ったメンバーとか、外から与えられる環境の中で作った、自分のちっちゃい世界の中で満足しちゃう傾向があるんですね。 それで、先ほどのディスカッションの中でもいわれていましたが、直接的には関わりがないことかもしれないけど、実は関わっていて、巡り巡って自分に帰ってくるんだよ、みたいなことを実感させることが大事じゃないかということになりました。
●第5テーブル 報告者 鈴木 祥大 (京都大学経済学部)
とりあえず、20代の投票率を上げるためにどうすればいいかということで、まず、一つとしては、5年後、10年後先というか、選挙で何が変わるかという情報を、20代は知ることがないということが問題だと考えました。 後は、知ることができないことに加えて、若い人が、実は探しに行こうともしない。 その原因は、マスコミが意図的に隠していたり、議論する場がないっていうことがあげられまして、また、このクオリアAGORAもこんな京都大学の中で行われているのに、学生、院生が10人ぐらい、これだけしか来ていない。 単位になるかならないかしか考えてなくて、単位になったとしても、特に、京大とかだと、「優」ではなくて「可」をとればいいやという意識が問題なんじゃないかということで、まあ、こんな若者が出る、日本の小中高を含めた教育が低投票率につながっているんじゃないかということを考えました。 アメリカの大学では、選挙について考えなければ、大学生としての資格がない。 家族の影響を受けずに、個人で投票をしなきゃいけないという雰囲気がある。 その一方で、日本は、出る杭は打たれというか、目立つことに対して、極端に恐怖感を覚えるであるとかいうことが、小中高の教育においてなされていて、それで、大学にしても、若者は何も知らない、何も考えていないと愚民扱いする。 まあ、これって、むしろ、教授たちのこと。 なんて話も出ましたが…。
制度的なものとしては、ペナルティーであるとか法律規制というものを女性、年代別で枠を作るなどの意見が出ましたが、それよりやはり、教育であるとか個人の意識のほうが重要であると考えました。
そして、20代が投票に行ったらどうなるかですが、先ほどのリフォーミストっていう人が、増えるんではないか。 それによって、大幅な変化が起きることが予想されるが、それを、20代の間で論争できる準備が、今できているのか。 できていないのではないか。 その変化をうまく利用できるのか、それとも、ナチスのヒットラーユーゲントのように、うまく扇動に利用されてしまうのではないか、ということがあげられました。 これに対して、どうするかということで、小中高から、自分たちで論争できるようにすることが、それを防ぐことになるのではないかということを思いました。 後は、教育とのつながりでいうと、棄権と不登校はかなり親和性があり、民主主義をうたっているけども、実際は仮面民主主義だという意見もありました。
女性と若者の被選挙権行使ですが、内田先生が、どういう条件だったら立候補するか、という質問を出され、応援してくれる人が1000人ぐらいいたら立候補するっていう意見がありました。 しかし、それは現実的ではない、と。 まあ、考えてみると、選挙に出ることによって、今あるポストを捨てなければいけないということ。 そして、落ちた場合、お金もかかって元のポストに戻ってくることが非常に難しいわけで、落ちた時のリスクは非常に高い。 これが、立候補が増えない大きな原因ではないかと考えられるわけです。 とにかく、若者、女性が、今生活が安定していない中で、やっとこさ手に入れたポストを捨てて立候補するのは非常に難しいので、裁判員制度とかボランティアのように、ポストを捨てなくてもいいような仕組み。 あるいは、議員制度に、パートとフルでやる両方を取り入れたらどうかという意見も出ました。
クオリアAGORA事務局
さあ、上野さん、若者の発表、報告を聞いていかがだったでしょう。
上野 千鶴子 (社会学者 立命館大学特別招聘教授 東京大学名誉教授)
ワールドカフェって、何をやるのかと思ってましたら、何だかずいぶんローテクでマニュアルで楽しかったです。 ご報告を聞いて、私の仮説がほぼ裏付けられた思いです。 ということは、20代にあまり希望が持てないということがわかってしまいました。 どのグループも、現在の若者は不満がなく、幸せで、自分の小状況に生きていてという説でした。 私なんかムカつくことだらけです。 若いときもムカついて、今もムカついていてずっとムカつきつづけているんですが、若者が何でムカつかないかというと、知らないからだ。 本当のことをいう人がいないからだ。 じゃあ、何で知らないかというと、知らせないからだ。 それだけじゃなくて、知ろうとしないからだ。 どっちもどっちだ、って話になりまして、それは何のせいかというと、皆さんの今の意見を聞いたところによると、それは教育のせいらしい。 みごとに愚民になって、「ボクたちがこうなったのは、教育のせいだもんね」っていうふうに言っているように聞こえました。 では、それをどう打開するのかというと、選挙がどんなに大事か、政治がどんなに影響があるか、教えたらよいとなっても、堀場さんがおっしゃったように、きっと教えられたことだけするだろう。 自分の頭で考え、自分で動く教育をするってことにはならないんじゃないかと思いました。
私が京大生だったころ、京大って、反権威主義の牙城でしたよね、山極さん。 昔は、権威に楯突くことが若さの証だと思っていて、人と違うことをやるのが若者の証だとすら思っていたのに、今は、勝ち馬に乗る、大勢に乗っかるっていうのが、若者の動向のように見えます。 いつからこうなっちゃったのか…。 今の話を聞いてると、教育のせいでこうなったのなら、これからの変化も教育に期待することしかできないなら、今の教育が変わる可能性はほぼないでしょうから、若者は、これから先も、おそらく小状況にまったり生きるであろうってことになれば…彼らの未来と老後は、まっ暗でしょう。
ベンチャースピリットのある若者は、沈みゆく泥船である日本を捨てて、どこにでも外国に出ていけばいいのですが、その気持ちがなければ、泥船と一緒に沈んでしまうしかありません。 このような状況で、京都大学は、いったいいかなる人材を育てる教育をなさるのか。 山極総長に、十分腕を振るっていただきたいと思います。
山極 寿一(京都大学総長)
やっぱり上野さん、すごいなあと思いますよ。 全く同感です。 総長になってまだ2カ月足らずなんですけど、ほんとに危うい状況に気がついた。 自分の至らなさを痛感しました。 何がイカンかというと、要するに、事なかれ主義なんですよ、すべてが。 誰かがやってくれるに違いない。 私に関係しないことは、なるべく手をつけずにおこうっていうのが蔓延している。 何か、自分が知らないうちに進んでしまっていて、それに対して、自分の責任というのを全く感じない。 これを機会に、この風潮を何とかしたいと思います。
最後に、ぜひ、上野さん、政治の世界に行ってください。
クオリアAGORA事務局
とても豊かな時間を過ごせたんじゃないかなと思っています。 いろんな課題ができました。 それを、みなさんそれぞれ持って帰ってがんばってくれよというのが、きょうの話じゃないかと思います。 こういう交流って、多分ないと思いますよ。 「近衛ロンド」をもう一度っていうことになると思いますので、これからも続けていきたいと思います。
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