philosophy & message: 2008年4月アーカイブ

 今、揺り戻しが来て見直しが進められていますが、教育の現場では「ゆとり教育」が言われていました。これは、「学習者が詰め込みによる焦燥感を感じないよう、自身の多様な能力を伸長させることを目指す教育理念」で、これにより学習指導要領が改定され、授業時間の削減、学習内容の簡易化、完全週休二日制などが実施されてきました。

 しかし、私はこれはとてもナンセンスなことだと思いますし、はじめから反対していました。

 そもそも、シビアな人がホッと一息を着くための「ゆとり」という発想を小学生に対して導入することはおかしい。むしろ私は、もっと基礎をしっかりやれといっていたのですが。

 結局、これにより失われた何年間があります。本当に怖いことです。

 最近「理科離れ」といわれます。しかし、私が感じるのは、「離れるも何も、本質的に理科をやっていないではないか」ということです。「食わず嫌い」という言葉がありますが、まさにこれと同じではないでしょうか。

 ちゃんとした料理を食べて「これは私の口に合わない」と判断するのであればいいのですが、ろくな料理を食べさせないで「好きではない」というのはどうかと思います。

 小学校では、一通りのメニューを食べさせないといけないのです。そしてその中から「先生、私はこれが好き」「これはどうしてもあわない」と本人が感じ取ることが大事だと思うのです。

 人間を製品のように機械的に品質管理をすれば、優れた人間になるという考えは間違いです。人間には個性や感情があり、好きなことなら苦に感じずにとことんやり遂げるという素晴らしい特性を持っています。そういう特性を伸ばすことが、本来の教育ですよね。

 これがあった上での「ゆとり」だと思うのです。学校で学んだものについて、少しでも興味が持てれば、自分で図書館に行ったり、関連する本で勉強もできる。
 私の場合は、もともと理科が好きでした。そして学校の教科書だけでは物足りなくなり、本を読んだり、模型の本を買って自分で飛行機を組み立てたりしていました。さらに、当時は各クラスに数名のインターン(師範学校の学生)がいましたので、その先生が色々と教えてくれたのです。

 音楽の先生はピアノや歌を、理科の先生は様々な実験を、歴史の先生は歴史を、と自分が関心を持った分野の先生の所に行けば、色々と教えてくれたのです。このような出会いから学んでいくことが大事で、「これをやらないと大学には入れない」というような押しつけは、根本的にその子供がかわいそうです。

 音楽に関心を高めた私の同級生は、その後も音楽の道を進み、現在もピアノの先生となっています。

 

 私は、幼年期から「人間は前向きにどんどんやれば、面白いことがいっぱいあるんだ。後ろ向きになれば、あなたの人生はずっと暗くなってしまうんだ」という考え方を植え付けていくべきだと考えています。

 

 どんな人間でも、探し出したら必ず他の人が持っていないような特性を一つは持っているのです。教育というのは、そこを探し出すことから始まります。幼児期に親が色々観察していると、運動神経が発達しているとか、表現力が豊かであるとか、整理整頓が上手いとか、音感が優れているとか、段々と分かってきます。

 

 しかし今の親は忙しすぎて、我が子をじっくり観察する時間が少ないのが現状ではないでしょうか。しかしそんな時間を意識的に見つけて子どもと遊び、会話することで、子どもの好きなこと、面白いと感じていることを見つけてあげてください。無理矢理教育してやろうという気持ちや態度で接すると、子どもが好きなものを発見する機会を失ってしまうということを知って欲しいのです。

 

 「教育」は英語でエデュケーション(education)。言葉通り「エデュース(educe)」つまり潜在的な能力や性能を引き出すことです。人間は何が一番ハッピーかというと、自分の最も得意とする分野で勝負をするということです。そうしたら、はじめからものすごい+のアドバンテージを持っているという優越感があるし、軽く戦っても勝つし、みんなから尊敬されるし、ますます自分のスキルが上がっていくわけです。

 これが逆だとどうでしょうか。

 残念なことに、今の教育は大学入試という関門があります。そのため、教育の最終的な目標が偏差値を上げることになります。大学の受験科目は決まっていますから、好きであろうが嫌いであろうが、それをしなければいけない。

 

 

「私はベンチャービジネスで成功して、一日も早く上場したい」等という輩がいますが、全く目的を取り違えているとしか言いようがない!そういう輩が大部分だから、ベンチャービジネスが誤解されるのです。

 本当にベンチャービジネスをやりたいのであれば、もっとベースを固めて、マーケティングをやり、その上すべての勉強をしてから挑戦しなければいけないと思います。

 人間がこれから生きていくことは、これは正直言うと全部ベンチャーなんです。これから先、何が起こるか分かりません。それを私たちはリスクマネージメントをしながら、あるいは確率的に色んなことを考えながら、人生を歩んでいきます。自分の限界を考え、あるいはどこを伸ばしたらどのような人生が拓けるかという展望と希望と夢を持ち、そして自分の自己実現のために日々を送るということ、これがベンチャー魂なんです。

ベンチャー論というのは、「ベンチャービジネスをやって一山儲けてみぃ」という軽薄なものでは決してありません。

 

 

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(株)堀場製作所 社是

  • (株)堀場製作所 社是

著書

  • 堀場雅夫

プロフィール

  • 堀場 雅夫
    大正13年12月1日生まれ

    【学 歴】
    1946年 京都帝国大学 理学部 物理学専攻卒業
    1961年 医学博士号取得

    【職 歴】
    1945年 堀場無線研究所創業
    1953年 株式会社堀場製作所設立 代表取締役社長に就任
    1978年 株式会社堀場製作所 代表取締役会長に就任
    1995年 株式会社堀場製作所 取締役会長に就任
    2005年  株式会社堀場製作所 最高顧問に就任 現在に至る

    【現 職】
    ■財団法人 京都高度技術研究所 最高顧問
    ■京都科学機器協会 理事長
    ■日本新事業支援機関協議会(JANBO) 会長
    ■京都ナノテク事業創成クラスター本部 本部長
    ■独立行政法人 科学技術振興機構 JSTイノベーションプラザ京都 総館長
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